おめでとう

彼女が話しかけてきた時、誰だか分からなかった。
スタッフの知り合いか、友達なんだろうなと。それでも話しかけてきたから慌てて話を合わせてみたけど、そんな様子がバレてて「わからないの」の一言。そこでようやく理解する。
彼女がだれなのか、隣の男性が誰なのか。

最初の記憶は、一人でいつも歩いてきている子。そしてコーヒーを「レギュラー」でと注文する子。なんとなく印象に残るから、いったい彼女は何歳ぐらいで何をしているのかと、スタッフとよく話をしていた。
そんなある日、彼女は友達と二人で真新しい制服を身にまとい姿を現した。なんと高校生だったのだ、しかも一年生。スタッフとはずっと高校を卒業して働き出してるくらいの子かなと話し合っていたので、その時はスタッフと一緒に可笑しいながらも、かなり驚いた。


高校生の彼女はなんとなくいろんなものを持て余しているように見えた。やればできるだろうに、あえてやらないように見えた。何をそんなに持て余すのだろうかというくらいに、怠惰に憧れを、真剣には嫌悪をそんな感覚を感じた。
結構、その時期はスタッフ共々仲良くなったりもし、遅くまで迎えがくるまで待っていたりして、みんなでうどんなんかも食べに行ったり、大晦日の年越しとかもやったりしたような気がする。
そう考えると彼女との記憶は結構ある。そんな彼女も高校を卒業して志摩から離れ、たまに
、帰省したときに顔を見せてくれるぐらいになった。学生から社会人になってしばらくして結婚するかもしれないという話を聞いた。親戚のおじちゃんにでもなったかのような気分になった。多分、こんな感じに思うのだろうと。

今回、ぼんやりしていたところに突然現れた二人。ニット帽を被っていたとはいえ最初気づかずに、旦那さんを紹介されても「おめでとうございます」というセリフもろくに出てこなかった。いや我ながら情けないなあと思った。

あらためて「おめでとうございます」とこの場を借りて言わせて頂きます。
うん、ほんと君が結婚するなんてね。不思議です。
いやいや、ほんとおめでとう。親戚のおじちゃんみたいな人からですが、よき二人になってください。