cafe屋襲撃

いつの時期なのかよく覚えてはないのだが、朝早くに天井から奇妙な音が聞こえてくることがあった。
一時のことなので、すぐに忘れてしまうのだが、聞こえてくる時はすごく気になってしかたないぐらいの音で、寝ぼけ頭にはこたえる。
しばらくしてそれはカラスの足音だということが分かった。
カラス?
なんでカラスが屋根の上をリズミカルに歩き回るのか不思議だった。「歩き回る」、多分、それが一番しっくりくる言い方だと思う。
一羽なのか複数なのかは分からないが、しつこいくらいにカラス達?が歩き回る、なんのためなのか、なにか意味があるのか分からないけれども。

今朝、仕込み中に届いた製菓材料のきちんと包装された粉を段ボールのフタを開けて、テラスのカウンターに置いた。ほんの少しの間、片づける前に置いておくつもりだった。いつもは、そんな外に置いていたりすることがないのだが、今日だけたまたま置いてしまった。

いつものように、オープン前に行く買い出しを終え、粉を片づけようとテラスのカウンターに近づくと、何か様子がおかしい。段ボールの開いたフタの周りに、白いものがついている。
そんなことがあるはずはない、と思いながら恐る恐る近づくと、一つの粉の袋が2か所も破られ、無残にも粉が周りに飛び散っていた。
全く状況が分からなかった。何で破れているのか、初めから破れていたのかとも考えたがそんなことはないとすぐに思い直す。すでに、階下で車に乗って開店を待っていらっしゃるお客様も見えたのでさらに焦る。
焦る頭で冷静によくよく考えると、鳥か?と思う。
さらに、あいつらか?と。
きっと、ずっと前から企んでいたのだ。襲撃する計画を。それがこのきっかけだったのだと。
あたふたする姿を見て、どこか遠くでほくそ笑む彼らの姿が脳裏によぎる。しってやったりの表情で。
何年もかけて天井で歩き回りながら、襲撃の計画をしていたのかと思うと腹正しくもある。が、結構、やるな、と感心もする。

実際、新しく届いたばかりの粉をダメにされてしまい気分的には朝から凹んだ。全く、なんてことだと…。
この後も、天井でそんな音を聞いたら、用心しなくてはならない。二度目の襲撃に備えて。